マイド〜、トギーです!
先日、HDDに録画していた『NHKスペシャル・ピラミッド特集』を再生しまして、頭のアルバムがふっと開きました。
ページ番号は2012年11月。
アレクサンドリア駅から電車に揺られ、観光バスを乗り継いでギザへ。
現地滞在はおよそ3時間。短いながらも、ぎゅっと濃い時間でした。
それにしても、この話、実はこれまであまり人にお話ししてこなかったんです。
知り合いでも、ご存じない方が多いかもしれません。
隠していたわけではなく、ただ、砂の匂いと一緒に心の中で静かに寝かせていただけでして(笑)。

目次
ピラミッド内部は“天然サウナ”でした
まずは『クフ王のピラミッド』内部へ。
入口をくぐった瞬間、空気の温度が一段上がったように感じます。
狭い通路を中腰で進み、ハシゴのような急勾配を登る場面もあり、なかなかの運動量でした。
ものすごく蒸し暑く、汗は首筋を一直線。
しかも当時はカメラ持ち込み禁止。
内部の一枚が残せなかったのが、今でも少し心残りです。

目の前の石段に、ただただ「よく積んだなあ」
外へ出ると、砂漠の風がスポーツドリンクのようにおいしく感じられました。
目の前の石段を見上げると、「重機もない時代に、よくぞここまで」と素でつぶやいてしまいます。

砂の上でイエローの円(ソフトブーメラン)
ここで、バッグから旅の相棒『ソフトブーメラン』の登場です。
トギーが大好きなイエロー。
スポンジを固めたような素材で、飛距離は約10m。
ひらけた砂地で周囲を確認し、風を読んで、角度を決めて、そっと短くひと投げ。
黄色い翼が光を拾い、小さな円を描いた瞬間、ツアーの皆さんが目を丸くされて、「本当に戻るんですね!」と拍手してくださったのが嬉しかったです(笑)。
そのとき、遠くで客待ちしていたラクダのお兄さんが砂煙を上げて一直線。
満面の笑みで「What is this!?」と話しかけてくれて、こちらも思わず笑顔で会釈。
言葉より先に通じるのは、ブーメランが人を惹きつける不思議、ですね。

押し売りの圧には「いらん!」で線引き
名所のもう一つの顔にも向き合いました。
呼び込みが想像以上に強引で、正直少し腹が立ちました。
景色を眺めていても、横からお土産やラクダ乗りの勧誘が滑り込んできます。
中には反応を試すように、日本語で「山本山(やまもとやま/Yamamotoyama)!」と声をかけてくる方も。
あまりにしつこい誘いには、はっきり日本語で「いらん!」とお断りしました(ここだけは関西の血が騒ぎます・笑)。
笑顔は大切ですが、『境界線』も同じくらい大切ですね。
スフィンクスは、思っていたより遠い
スフィンクスにも会いに行きました。
ところが規制が厳しく、観光客が立てる場所からはかなり距離があります。
写真で見慣れた迫力を期待していたぶん、最初は少しだけ拍子抜け。
それでも、遠目に眺める横顔は、砂塵と陽炎の向こうでじっと静かに構えていました。
近づけないからこそ、逆に「距離がつくる存在感」があるのかもしれません。
人の波が引いた一瞬、ふっと静けさが落ちて、古代と今が同居する感じがして好きでした。

豆知識:ツタンカーメンの投げ棒とヒエログリフ
古代エジプトでは、鳥狩り用の投げ棒(ブーメラン型の戻らないタイプ)が使われ、ツタンカーメン王の墓からは20本以上が出土していると伝わっています。
主材は木で、象牙や金で装飾された例も。
湿地で水鳥を狩る壁画が残り、ヒエログリフにも投げ棒を表す記号があります。
数千年をまたいで、ピラミッドの風の中に小さな円がそっと重なる、と想像してしまいました。


旅の作法:風を読んで、投げない判断
トギーは『ブーメランを持って旅する』のが長年の癖でして、ギリシャ神殿、富士山頂、屋久島の縄文杉、ローマのコロッセオにも持って行きました。
ただ、そこでは投げずに、その土地の空気を吸わせただけ。
人や環境への配慮を最優先に、風を読んで「今日は控える」判断を大切にしています。
ギザでのひと投げは、いろいろな条件が重なった数少ない例外でした。
次なる円は、白い海の北極で
余談ですが、極寒つながりの小ネタをひとつ。
知床で「ブーメランパンツ」を凍らせて軽く投げ、ちゃんと戻したことがあります(笑)。
実はこれ、テレビの企画で『探偵!ナイトスクープ』でやったネタ。
オンエア当時はけっこう話題になりました。
そして次の一投は、北極(北極圏)へ。
「白い海で風を読む」をテーマに、小さな円を一つ。
南極は南極点で先に投げた人がいるから、僕は“まだ誰も描いていないかもしれない円”を白い海に探したいんです。
無理はせず、状況によっては「今日は空気だけ吸わせる」に切り替えます。
小さな円を一つ刻めたら、それで十分。
ここで冗談半分の本気を少し。
前澤友作さん、もしこの文章をご覧になっていたら、北極ブーメラン計画にスポンサーとして……どうでしょう?(もちろん冗談です・笑)。
それでも、夢は声に出したほうが、きっと風をつかみやすい。
そんな気がします。

3時間のギザがくれたもの(締め)
蒸し風呂の内部、ハシゴ登りの息切れ、押し売りの圧、日本語の「山本山(やまもとやま/Yamamotoyama)」テスト、ラクダの急行、遠いスフィンクス。
予定外がぎゅうぎゅうに詰まって、いまも鮮やかに思い出が戻ってきます。
ブーメランは風と投げ方しだいで戻りますが、記憶は録画の再生ボタンひとつで勝手に戻ってくるものですね(笑)。
参考リンク(豆知識の出典・深掘り用)
Throwing stick(総説・英語/Wikipedia)
Boomerang(総説・英語/Wikipedia)
Tutankhamun(副葬品全般・英語/Wikipedia)
British Museum(コレクション検索:Egypt + “throwing stick”)
The Metropolitan Museum of Art(コレクション検索:Egypt + “throwing stick”)
Griffith Institute Archive(Tutankhamun Archive カタログ)
トギーの一言
名所で『ソフトブーメラン』を試す際は、短く・安全に・すぐしまう。
強引な呼び込みには笑顔を保ちつつ、日本語で「いらん!」と線を引くのも大事。
投げない選択=その土地の空気を吸わせるのも、立派な旅の作法です。
北極編は、冗談半分の本気で臨みます。
小さな円を、白い海にそっと。